多くの手術で全身麻酔を行います。全身麻酔をかけるため、一時的に身体機能が停止し、意識を焼失します。そのため麻酔科医が全身管理を行います。
全身麻酔の目的
麻酔の目的は主に3つです。
鎮静 | 精神的な苦痛をなくすため |
筋弛緩 | 患者が動かないようにするため |
鎮痛 | 身体的な苦痛をなくすため |
全身麻酔の流れ
- 確保した静脈ルートより鎮静薬を投与する。
- 確保した静脈ルートで筋弛緩薬を投与する
- 筋弛緩ができたら気管挿管し人工呼吸器を作動
- 人工呼吸器導入後吸入麻酔薬や静脈麻酔を持続的に投与する
全身麻酔後の観察・対応
ここでは全身麻酔後の観察点を紹介していきます。
覚醒状態
術後、麻酔からの覚醒が十分でないときがあるので、覚醒できているか確認しましょう。
自発呼吸が10回/分以上、開眼や手を握るなど従命できることを手術室から出る前に確認します。
術後の悪心・嘔吐(PONV)
術後は患者さんによって悪心・嘔吐があります。PONVは明確な定義はないですが24時間~48時間以内の悪心、嘔吐が出現することです。
PONVが発症要因は様々ですが患者によって発症するリスクが高い患者がわかっていると術後のPONVに予測的に対応することができます。
PONVの発症要因
PONVの発症要因は3に分けられます。
患者因子 | 女性、非喫煙者、PONVまたは乗り物酔い歴、若年、片頭痛持ち |
麻酔因子 | 揮発性麻酔薬(セボフルラン、イソフルラン)の使用、亜酸化窒素の使用、長時間の手術時間、術後のオピオイドの使用、 |
手術因子 | 胆嚢摘出術、腹腔鏡手術、婦人科手術 |
Apfelスコアというものがあり女性、非喫煙者、PONVまたは乗り物酔い歴、術後オピオイドの使用、はPONVの4大リスク因子として挙げられています。
引用文献
発症要因を理解していると、術後に「悪心、嘔吐が起きるかもしれないな、必要なら制吐剤を用意しておこう。」など事前に対応策が考えられます。麻酔の種類は覚えることが難しいですが、患者因子や手術因子は比較的わかりやすいためリスクに当てはまれば予測をしてシミュレーションするといいでしょう。手術に向かうまでの会話で「乗り物酔いしますか?」や「普段は片頭痛はありますか?」など世間話でそれとなく聞くこともいいでしょう。入院時に情報収集するのもよいでしょう。
術後の嗄声
ほとんどは手術時の機械的刺激によって起こった一時的な声帯機能低下なので長くても一週間で元に戻ります。気にする患者さんもおられるため時間がたてば元に戻ることを説明しましょう。
疼痛
手術後は意識も戻り痛みが伴う患者も多いです。硬膜外麻酔や静脈麻酔が留置されたまま帰室され疼痛コントロールされています。硬膜外麻酔やPCAをつけた状態で帰室する患者さんも多いです。
オペナースからの申し送りの時に何を使用したか、持続的に流しているものは何か確認していきましょう。
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